産後の体はホルモンで「靭帯が緩んだまま」10kgを抱えている|ママの不調の解剖学│岩倉市の接骨院
2026年07月30日
「妊娠前は肩こりなんてなかったのに」「抱っこするたび腰と手首が悲鳴を上げる」──産後のママの体は、周りが思うよりずっと過酷な条件で働いています。しかも自分のケアは、いつもいちばん後回し。
こんにちは。岩倉市・一宮市で開院から延べ2万人以上の施術実績がある、いわくら肩甲骨骨盤接骨院です。今日は「産後はなぜこんなにあちこち痛むのか」を、根性論ではなくホルモンと解剖学で説明します。ご自身の体に起きていることが分かると、「私が弱いからじゃなかった」と少し楽になるはずです。
事実①:出産後も数ヶ月、靭帯は「緩んだまま」

妊娠中、体はリラキシンというホルモンを分泌します。その名の通り、骨盤まわりの靭帯を緩めて(リラックスさせて)、赤ちゃんの通り道を広げるためのホルモンです。恥骨結合(骨盤の前のつなぎ目)は妊娠中に物理的に広がることが知られています。
重要なのはここからです。リラキシンの影響と靭帯の緩みは、出産した瞬間に消えるわけではなく、産後も数ヶ月かけて徐々に回復していきます。つまり産後のママは、「骨盤のネジが緩んだ状態」のまま日常生活に復帰しているのです。ネジの緩んだ椅子に座り続ければガタつきが進むように、緩んだ骨盤に偏った負荷をかけ続ければ、傾き・ねじれが定着しやすい──産後の骨盤ケアに「時期」が重要なのは、このホルモンの時間割があるからです。
事実②:産後ママの約2人に1人に「腹直筋離開」が起きている

「産後、お腹に力が入らない」「ぽっこりお腹が戻らない」──これ、脂肪や筋力低下だけの話ではないかもしれません。妊娠でお腹が大きくなる過程で、左右の腹直筋(いわゆるシックスパックの筋肉)の間をつなぐ白線という結合組織が引き伸ばされ、左右に離れてしまう現象を「腹直筋離開」と呼びます。研究報告によって幅はありますが、産後の女性の3〜6割程度にみられるとされる、決して珍しくない状態です。
セルフチェックは簡単です。仰向けで膝を立て、頭を少しだけ持ち上げた状態で、おへその上下を指で縦に押してみてください。指が2本分以上スッと沈む縦の溝があれば離開の可能性があります。
ここで大事な注意をひとつ。離開がある状態で普通の腹筋運動(上体起こし)を頑張ると、腹圧で溝がさらに押し広げられて逆効果になることがあります。「産後だからとりあえず腹筋」は危険な近道。先に腹横筋(お腹のコルセット筋)を目覚めさせる順番が必要です。
事実③:抱っこの負荷は「体から離れた分だけ」倍増する
物理の話を少しだけ。荷物の負荷は重さだけでなく体の中心からの距離で決まります(てこの原理)。体に密着させて10kgを抱えるのと、腕を伸ばし気味に10kgを抱えるのとでは、腰への実質負荷は後者が数倍になります。
新生児3kgから始まった抱っこは、1歳頃には約10kgに成長します。しかも「そーっと起こさないように」というミッションのせいで、ママの抱っこは腕を体から離した中腰姿勢になりがち。さらに授乳では約5kgの頭を前に落としてのぞき込む姿勢(首への負荷は角度次第で20kg超)が1日何時間も続きます。加えて手首では、赤ちゃんの頭を支える親指側の腱が使われ続け、腱鞘炎(ドケルバン病)が産後・育児期に集中して発生します。
緩んだ骨盤×増え続ける重量×てこに不利な姿勢×休みなし。これが産後の体に起きていることの全貌です。あちこち痛むのは、弱いからではなく、条件が過酷すぎるからです。
今日からできる「物理で楽をする」3つの工夫

- 抱っこは「密着+骨盤の真上」:赤ちゃんを胸に密着させ、自分の重心の真上に載せるイメージで。骨盤の横に乗せる「腰乗せ抱っこ」は片側の腰方形筋と中臀筋を酷使するので、やるなら必ず左右交代を
- 授乳は「赤ちゃんを口の高さへ」:クッションや丸めたバスタオルで高さを作り、首を落とさない。「ママが屈むのではなく、赤ちゃんを持ち上げる」が原則です
- 床からの抱き上げはスクワット式:腰を曲げず、膝を曲げて体ごと下がる。産後に限らず、ぎっくり腰予防の王道です
回復期は「不調が出やすい時期」であり「整えやすい時期」でもある
リラキシンの影響が残る産後数ヶ月は、痛めやすい半面、骨盤まわりの位置関係を整えるうえでは適した時期でもあります。当院では、産後のママの状態を検査したうえで、緩みの残る骨盤をソフトに整え、腹横筋・骨盤底筋群といった「体の内側のコルセット」を再教育する施術を行っています。腹直筋離開が疑われる場合の運動の順番も個別にお伝えします。
一般的には産後1〜2ヶ月の健診で問題がなければ始められる方が多いですが、体調には個人差があります。帝王切開の方は傷の回復も考慮しますので、まずはご相談ください。初回の流れは初めての方へをご覧ください。なお、発熱・悪露の異常・尿もれの悪化など気になる症状がある場合は、必ず産婦人科を先に受診してください。
産後の回復ロードマップ:時期別に「やっていいこと」が違う
産後ケアで一番多い失敗は、時期に合わないことを頑張ってしまうことです。目安のロードマップを共有します(経過には個人差があります。必ず健診の結果を優先してください)。
産後〜1ヶ月(産褥期):回復最優先
子宮と骨盤底筋群が回復の真っ最中。この時期の運動は呼吸だけでOKです。仰向けで膝を立て、息を長く吐きながらお腹をぺたんと薄くする「ドローイン呼吸」は、腹横筋と骨盤底筋群を同時にやさしく起こす、産褥期にできる数少ない安全なエクササイズです。
産後1〜2ヶ月:健診クリア後、ケア開始のゴールデンタイム入口
骨盤まわりの施術を始められる時期。リラキシンの影響が残るうちは、強い矯正ではなくソフトな調整+深層筋の再教育が合理的です。
産後2〜6ヶ月:整えやすさのピーク
靭帯の回復が進みつつ、まだ位置関係を整えやすい時期。腹直筋離開のチェックをして、問題なければ軽い体幹メニューへ段階的に進みます。上体起こし系の腹筋はまだ我慢。先に腹横筋、が鉄則です。
産後6ヶ月以降:通常メニューへ移行期
ここまでに土台が整っていれば、スクワットなどの全身運動へ。「6ヶ月を過ぎたから手遅れ」ではなく、何年経っても筋バランスの再教育は可能です。焦る必要はありません。
実際の来院例:「抱っこで手首が限界」だった生後4ヶ月のママ
岩倉市在住の30代女性・第一子育児中の方の例です。「手首が痛くて抱き上げの瞬間が怖い。腰も朝がつらい」と、生後4ヶ月のお子さん連れで来院されました。検査では、親指側の腱の炎症サイン(フィンケルシュタインテスト陽性)に加え、授乳時に首が深く前に落ちる姿勢と、右腰骨に乗せる片側抱っこの癖を確認。手首だけの問題ではなく、「肩甲骨が使えず、腕先だけで10kg近い負荷を受け止める使い方」が根本にありました。
施術では骨盤と肩甲骨まわりを整えて「腕先ではなく体幹で抱ける」土台を作り、授乳クッションの高さ調整と密着抱っこへの変更を実践してもらいました。手首の炎症が強い時期は無理をさせず、整形外科との併用もご案内。数週間で「抱き上げる瞬間の怖さが消えた」と報告いただきました(※経過には個人差があります)。手首の痛みを手首だけで解決しようとしない──これが育児期の腱鞘炎ケアのコツです。
よくある質問(Q&A)
Q1. 赤ちゃん連れでも通えますか?
A. はい、キッズスペースを完備しておりますので赤ちゃん連れのママさんも多く来院されています。ご不安な点は予約時にご相談ください。
Q2. 産後どのくらいまでなら骨盤ケアは間に合いますか?
A. 産後数ヶ月が整えやすい時期ですが、それを過ぎたら無意味ということはありません。産後数年経ってからのケアでも、筋バランスの再教育で変化は目指せます。
Q3. 腹直筋離開は自然に治りますか?
A. 産後1年ほどで自然に改善する方も多い一方、残る方もいます。指2本分以上の溝が続く場合は、腹横筋からの再教育をおすすめします。程度が大きい場合は医療機関での評価も選択肢です。
Q4. 手首の痛み(腱鞘炎)もみてもらえますか?
A. はい。手首局所だけでなく、抱っこ姿勢・肩甲骨の使い方まで含めてケアします。痛みが強く腫れがある場合は整形外科との併用をご案内します。
Q5. 料金はどのくらいですか?
A. アクセス・料金表をご覧ください。
まとめ:ママの体は、家族みんなの土台です
緩んだ靭帯、2人に1人の腹直筋離開、てこに不利な抱っこと授乳──産後の不調は解剖学と物理で説明できる「当然の結果」であって、あなたの弱さではありません。そして回復期の今は、整えるのに適した時期でもあります。抱っこのたびに顔をしかめる毎日から、笑って抱き上げられる毎日へ。あなたの体のケアは、後回しにしなくていいんです。気になることから、お気軽にご相談ください。
参考文献
- Sperstad JB, et al. Diastasis recti abdominis during pregnancy and 12 months after childbirth: prevalence, risk factors and report of lumbopelvic pain. Br J Sports Med. 2016.(産後6ヶ月で約45%、12ヶ月で約33%に腹直筋離開がみられたという有病率調査)
- Aldabe D, et al. Pregnancy-related pelvic girdle pain and its relationship with relaxin levels during pregnancy: a systematic review. Eur Spine J. 2012.(リラキシンと骨盤帯痛に関する系統的レビュー)
- Hodges PW, Richardson CA. Inefficient muscular stabilization of the lumbar spine associated with low back pain. Spine. 1996.(腹横筋の機能と腰部安定性)
- 厚生労働省「産後ケア事業ガイドライン」.(産後の母体回復期間に関する公的指針)
店舗情報

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